第7章 amazingがamazingでなくなったとき ー日々樹渉ー
『あんずって、お節介』
よく言われた。褒めているのかけなしているのか定かではなかったが、私はそれをけなしているととらえた。
だって皆私から離れて手の届く距離にさえいようとしなかったんだもん。
だからお節介をやめようって思った。お願いされたことしかしないようにしようって。
日々樹さんは生まれて初めて好きになった人だったから、尚更気をつけていたのかもしれない。
だけど、それがこんなことになるだなんて!
まだ、帰ってないよね…お願いします、まだどこかにいてください。
他の人達はいいです。でもあなたは手の届く距離にいてください。
どうしようもなく好きです、日々樹さん!
帰宅する生徒でごった返す道の中でひときわ目立つ日々樹さんを見つけた
人混みをかき分け私は日々樹さんの元へと向かう。
しかし、背中に軽い痛みが走って私は前のめりに転んでしまった。
咄嗟に手をついて怪我を回避する。
今、誰かに押された……?
慌てて鞄を拾おうとすると、誰かが私の鞄をヒョイと持ち上げた。
「残念、これで間に合わないね~」
「ご愁傷様!」
目の前に立つのは二人の普通科の女の子。
私が日々樹さんと付き合うようになってからしょっちゅうこういうことをしてくる。
私は立ち上がってスカートをパンパンとはたいた。
「鞄、返してください」
「えー?聞こえなーい」
「何言ってんだろーね!」
「あんずさんは鞄を返してほしいと言っていますよ?」
その女の子達の後ろから私の鞄を持って現れたのは
「amazing!!私の手にかかれば鞄を取り返すなど赤子の手をひねるのと同じこと!
…………さて、あなた達はあんずさんに何をしているのですか?返事次第では、道化師も鬼になることをお忘れなく☆」
日々樹さんのわずかに低くなった声にその子達は怯えて走り去っていった。
私は日々樹さんが取り返してくれた鞄を受け取って日々樹さんと一緒に帰ることにした。