第52章
「…………なんだ、ここにいたのか!」
私しかいない講堂に声が響いた。
見れば、三毛縞さんが肩で息をして入り口に立っていた。
「何してるんだ?」
答えはなにもしていない、だ。無意味に講堂に来て、無意味にそこに突っ立っていた。
「……………何かあったのか?」
私は首を振る。だって何もなかったから。
ただ、それは過去の話だ。
未来は違う。
正確には、これから何かあるのだ。
「三毛縞さん」
私は入り口に立つ彼の名前を呼んだ。
あの日、私は何をあなたに話したでしょう
あの日、なぜあなたは私を探していたのでしょう
あの日、あなたはなぜ肩で息をしていたのでしょう
あの日、私はなぜ講堂にいたのでしょう
あの日、なぜ講堂に人はいなかったのでしょう
あの日、何があったのでしょう