第50章 征服欲 鬼龍紅郎
三人で並んで歩く。さすがに全員ボロボロだった。
「なあ一つきいていいか?」
ふと零が声を出した。
「結局、杏里と紅郎ってどんな関係なんだ?」
その問いに、アタシ達はキョトンとした。
「…………不良仲間?」
「何で疑問系なんだよ……。」
アタシの答えに零は呆れ返った。
しかし、紅郎の反応は違った。
「俺にとっては………。」
紅郎がソッとアタシに手を伸ばした。親の拳骨により出来た右目のアザを優しく撫でる。
「ほっときたくない…………側にいて欲しい存在だな。」
二ッと。
満面の笑みを浮かべ、紅郎はアタシから手を離した。
紅郎はそのまま歩き続けたが、アタシは立ち止まってしまった。
「なぁ零……」
「ん?」
同じく立ち止まっていた零に尋ねた。
「ア………アタシ今…どんな顔してる?」
そらを確かめるように両頬を両手で覆った。当然、わからない。
「…………………可愛い顔」
零は耳元でボソッと呟いた。
突然のことにハッとして零を見たが、そこに零はいなかった。
突然いなくなり慌てたが、零は先を行く紅郎と肩を並べて歩いていた。
「………………ッ…何なんだてめぇらはーーーーッ!!」
アタシは二人のあとを追いかけた。
でもそんなことはこの夜が最後だった。
零はもう夜の世界にはバッタリこなくなったし、アタシは虐待のことが学校にバレて施設に行ったりして忙しかったし、紅郎は紅郎で自分のやりたいことだけをひたむきにやっていたし。
三人揃って、ということはなくなった。
いつかまた三人揃って会える。そんな気もした。
アタシはそう信じた。
これは、後の夢ノ咲の皇帝と。
最強の男と。
魔王の。
とある少女を巡った一瞬の出会いの話である。