第47章 何事にも屈しないけれど時には泣いてしまいそうになる 衣更真緒
特訓を終えたあと、私は再び生徒会室に来ていた。先程のこともあって廊下をスキップしたい気分だったけど、それでは怒られてしまうのでグッとこらえた。
「あんず………この前はごめんね」
と、姫宮くんが言ってきたが許した。問答無用で許した。目をウルウルされたら許しちゃうよ。何されても許しちゃうよ。
「すまんな、毎日のように駆り出して。英智は明日から復帰するからまたプロデューサーとして専念してくれ。」
「了解でーす」
とそんな感じに仕事をこなしていると、衣更がいないことに気づいた。
………部活だろうか?
「衣更さまなら、本日はtrickstarでの練習があるそうですよ。また近々ライブをするのでは?」
「え、あ、そっか、ありがとう!」
やけににっこりと笑う伏見くん。何で分かったんだろう………。
でもいないことにホッとする。朔間の言葉がまだ頭にこびりついていたから……。
「あんず、すまんがそこの棚にあるファイルをとってくれ。」
副会長にそう言われすぐ側にある棚に手を伸ばす……が……
(何っこれ……!パンパンじゃん!!全然ファイル抜けないし……ッ!!!)
それでも気合いで抜いたら、スポッと抜けた。
ファイルだけでなく全てが。
「わッ………!」
棚に入っていた本やファイルが全て私に降り注ぐ。思わず後ずさるが、足が絡まって尻餅をつく…………。
と思ったが、咄嗟に立ち上がった副会長が私の手を掴み転ぶのを阻止。そして自分の背中で本とファイルを受け止めた。
お陰で落下物はゼロだ。
「………危なかった、また整理しておかないと……」
しかし、そこでハッと私に触れたことに気づいたらしい。彼は私の事情を知っているからなおさら焦ったのだろう。
「あはは」
乾いた笑い声が出た。
「すみません、私も不注意でした。」
と穏やかな言葉を口から吐き出したが、内心穏やかでない。
(……嫌だ、嫌だ……ッ!!)
皮肉なことに、私は心の中を触られたくないということで夢中にさせて耐えたのだった。