第46章 クソ野郎が結婚したようです 七種茨
「じゃあ………どうしろって言うの……」
ワタシ自身、驚くほど悲痛な声が出た。
あんずさんは苦しそうに少しの間踞っていたが、ほんの少しで……
いつも通りに戻った。
「いやー、すみません!!一時的なもんなんですよ~!!」
「………よくあるの?」
「えへへ、ここ最近!」
内緒ですよ、と彼女は人差し指を口に当てる。そして飲み物を買ってくると言ってレッスン室を出ていった。
(……茨…………茨に言っとこうかな……ちょっと心配)
それが無理に明るく振る舞っているように見えたので、言わないでと言われた当の本人に伝えることにした。
例えこれで嫌われても、嫌われるのは凪沙で慣れてるし、別に…………
「……もしもし」
律儀にワンコールで電話に出た茨は、明るい声を出した。
『ちょうど良かった!お聞きしたいことが……』
「ちょっと待って。凪沙のことでしょ。あとでいくらでも答えてあげる。」
何となく予想はついたのでそう言った。すると茨は本当に黙ったので、図星だったのだと確信した。
「あんずさん、具合悪そうだからよく見てあげて。」
『……………………』
返事がない。電波が悪いのかと思えばプツリと電話を切られた。
(………………あれ)
その理由は察することができた。
(…………………もしかして)
茨はとっくに、気づいてた………?