第46章 クソ野郎が結婚したようです 七種茨
とりあえず唯一の手がかりである日和さんに電話を掛けた。
とかこんなことしながら手はちゃんと動いてて仕事してるからね!?デスクに向かってるからね!!
「もしもし日和さん、お休みのところすみません!」
『うん!すみませんって思ってないすみませんだね、素直でいいよ!!』
なんだか腹が立ったので(確かに心からすみませんなんて思ってないけど!←)日和さんを頭の中で描いてグーで顔パンしておいた。
とりあえず青葉先輩と同じ質問をすると、日和さんは気まずそうに笑って、青葉先輩と似たようなことを言った。
やはり関わりたくないらしい。
『___僕はそのことについて知ってるといってもちょっとしか知らないんだよ。』
それでも、ちゃんと教えてくれた。
『凪沙くんの幼少期に関わってるみたいなんだ。』
「…幼少期?あの、神なる父に幽閉されてた?」
『そうそう、その時。』
この話は日和さんから教えてもらった。しかし高校のときだからあまり覚えていない。けれどそんな感じだったはずだ。
『僕は何回か聞いたことがあるんだ。どうしてそんなに仲が悪いの?って。頑なに教えてくれなかったけど、一回ボソッて呟いたんだよ。きっと聞こえてないと思ってたんだろうけど。』
「……何て言ってました?」
『…………………小さい頃から大嫌いって。だから小さい頃なら、僕もまあ一緒に育ったんだけど…僕が由蘭くんに会ったのは高校になってからだし、凪沙くんが僕の知らないところで交友関係を築いてることはないはずだからきっと僕に出会う前なんだと思う。』
日和さんはそれ以来、尋ねるのをやめたらしい。そう呟いた凪沙さんの顔は、珍しく怒りに歪んでいて近寄りがたい空気を発していたというのだ。
あんなことはもう嫌だ、と彼は言った。私はお礼を言って電話を切った。それと同時に手元の資料が出来上がった。
そしてふと思い立った。
相良先輩は、凪沙さんが自分を嫌う理由がわからないと言った。あと、凪沙さんが大好きだと言った。
あんなに嫌われているのに。
どうして仲が悪い理由がわからないんだ………?
どうして大好きなんて言える……?
もしかしたら、先輩には…
凪沙さんと仲が良くて当然、という大前提があるのかもしれない。