第44章 明日ハレバレ良い日和 巴日和
「鬱陶しいんですッ!!!!!!!!!」
そんな怒声が聞こえてきたので、何事かと(だいたい想像はつく。)漣ジュンはレッスン室の前でため息をついた。
あんずと日和が付き合い始めた日は記憶に新しい。サマーライブあたりからだ。今日はレッスンもなにも関係なくただあんずに会いたいという日和のワガママに付き合っただけだ。
そのワガママのついでに、年末のSSについての手続きをジュンがしてる間日和の相手をわざわざ借りたレッスン室であんずに任せたのだが………
これは間違った判断だった。
ジュンはため息をつき、意を決して扉を開けた。
案の定、まるでこの世の終わりのような顔をした日和とぷくっと頬を膨らませ、顔を真っ赤にして怒るあんずがいた。
「……………あ、あんずちゃ…」
彼女へ手を伸ばすもあんずは一歩下がった。日和の手が虚しく空をつかむ。
そんな二人の足元には大量の紙………いや、ライブに関する書類が。
(ははあ、仕事中のあんずさんにちょっかいかけすぎたんすねぇ?)
きっと怒りのあまりあんずが床にぶちまけたのだろう。仕事人間の彼女にここまでさせるとは……。これが日和のおひいさんたる所以かもしれない。
「ベーーーーーッだ!!」
まるで幼稚園児みたいに舌を出して日和にそっぽを向き、足元の書類をすばやくかき集めレッスン室を出ていく。
「……………そ、そんな…待ってあんずちゃん!ごめんね!?謝るからね!?」
珍しく日和が下手に回っている……彼がこうなるのはあんず限定だが。
あの日和が素直に謝るとは。
(ざまぁみろ)
心の中で毒を吐き、ジュンはうんと伸びをした。
さて、あの二人の喧嘩はまだまだ続きそうだから…わざわざ借りたこのレッスン室を有効活用させてもらおう。そうしてジュンはもうじき発表の新曲の練習を一人始めた。