第5章 Valkyrieでも行き着く先はホッケー
「金平糖食べるか?おばあちゃんがいつものことながらくれたんだ。」
「…金平糖」
何だかとても懐かしい、そんな感覚がした
「どうかしたか?」
私は頭の奥底の記憶を引きずり出そうとした。
「いや、何か……………
思い、出しそう……で…」
『どうしたんだ、こんなところで泣いて』
『…………誰…』
『ほら、金平糖…
おばあちゃんがくれた』
「…おばあちゃんの、金平糖」
そうだ、いつも私を助けてくれたあの子以外にもいたんだ。私を助けてくれた人が。
「……あんず?」
金平糖を差し出したまま氷鷹くんが私の名前を呼ぶ。
何で忘れてたんだろう…?
私があの時と変わらない氷鷹くんの冷たい手から金平糖をもらって口に含んだのと同時に家に着いた。
「ありがとう、氷鷹くん。」
「いや…構わない。皆で食べなさいとくれたのだから。」
「ううん、そうじゃなくて。」
言いたい。言わなきゃいけない。
「いつも、ありがとう。」
あの時からずーっと言いたかった。
氷鷹くんは目を見開いた。今なら分かる。私、笑えてるんだ。
「…………あぁ。もう、泣くな」
どうやら泣いてもいたらしい。
氷鷹くんがあの日を覚えているかは知らない。でも、それでもいいやって思う
私は小さくなっていく背中を見て、涙をふいて家のドアを開けた。