第39章 溺愛大作戦 葵ゆうた
「鉄虎くん、忍くん~」
「いませんね………」
どこを探してもいない。…………当たり前だが、二人はそれを知らない。
「………なんか…疲れた」
あんずがその場にへたり込むようにして座る。
「休憩しましょうか。」
ゆうたがその隣に座る。
ボーッと海を眺めていると、あんずがポツリと呟いた。
「海に来たのに全然入ってないや…」
それを聞き逃さなかったゆうたが、喜々として言う。
「じゃあちょっと遊びます?」
「でも鉄虎くんと忍くんが………それに私泳げないし………………」
「浅瀬なら大丈夫ですよ!さっきは溺れちゃったけど、今度は溺れませんし。それに鉄くん達なら………………たくましいから大丈夫です!」
ゆうたにとってはまたとないチャンス。
ここぞのばかりに説得する。鉄虎と忍くんの扱いが雑なのは置いといて。
「…そうだね、鉄虎くん空手部だし忍くんは忍者だし。ひょっとしたら遊んでるだけかも。…………じゃあちょっとだけ。」
あんずはそう言うやいなやバッとジャージを脱いで海へ猛進する。
突然のことに驚いたがジャージの下に水着は着ていたらしい。
「本当だ、浅いから全然平気……。ねえゆうたくん、泳ぎ教えて~!シンクロナイズドスイミング出来るんでしょ?」
その問いには答えず、ゆうたはバッとパーカーを脱ぎあんずに着させた。
「ゆうたく「着といてください」……? 」
真っ赤になって目元を抑えるゆうた。何事かと聞くと、何でもないと言う。
「さ、さささて!おぉお泳ぎでしたね!教えてあげます!」
「ありがとう~!!」
理性的にやばいものを感じてとっさにパーカーを着せたのだが、着せたら着せたでまずかった。
微妙に透けてるし体のラインがハッキリと見える。
「ゆうたくんゆうたくん」
「は、はい何ですか……?」
「海楽しいね」
ニッコリ笑うあんずにゆうたは完全にノックアウト。
(……あんずさんはずるい)
思わずため息をついた。