第34章 侍系女子と女子力高い男子 鳴上嵐
「アタシと付き合ってください!」
突然のことについていけなかった。
告白してくれたのは後輩の鳴上嵐。学院じゃ女子力高しと有名だ。
………しかしこれはどうしようか。迷っていても仕方がないとは腹をくくってハッキリと告げた。
「すまんが鳴上、私は女だ」
「……………わかってるわよ?」
なるほど、恋愛対象は女らしい。
「気持ちは分かった。だがしかし、受けとることは出来ない。では。」
そのまま去ろうとしたが、グイと腕を掴まれた。
「待ってちょうだい、私……」
「見苦しい。フラれたなら男としてキッパリ諦めろ。」
「違うの、そうじゃなくて!」
はい、と手渡されたのはクッキーの入った紺色の包み。
「これだけでも、受け取ってもらえないかしら?お口に合うといいんだけど!」
それは今食べろということか。
鳴上は目を輝かせて反応を待っている。
「悪いが、甘いものは…」
「大丈夫!甘さ控え目よ!」
バッチリウインクされたが、嫌な物は嫌だ。しかしこれは後輩の頼み。無下にするわけにはいかん。
覚悟を決め、ひとくち食べる。
「……………………これ」
「あ……不味かったかしら?」
「いや………」
続けてもう一口。そしてパクパク食べているうちに、なくなってしまった。
「いつも、ライブを終えたユニットのメンバーに既製品だが甘いものを差し入れするんだ。するとたまにお返しをくれる奴がいてな。
その味にソックリだ。」
キョトンとしていると、鳴上は更に目を輝かせた。
「それ、私よ!やだもう!味を覚えててくれてたなんて!甘いものが苦手だって言うからね、アタシ毎日研究したの!」
鳴上は喜んで菓子作りの工程を語ってくれたが、サッパリわからん。
「良く覚えててくれてたわね、感激しちゃったわ。」
やっと菓子の話が終わると、今度はまたその話に戻った。
「別に。いつも紺色の包みだったからな。…………紺色は好きな色だ。見ていると落ち着く。」
「あら、そうだったの。知らなかったわぁ。」
鳴上はウフッと笑う。
こうして、私と鳴上は付き合いはしないが、定期的に菓子を食べさせてもらえることとなった。
彼の菓子は美味だ。とても嬉しい。