第33章 嫉妬大作戦 葵ゆうた
「………彼氏に嫉妬してほしい?」
珍しく自分の部屋に入ってきた妹が口にした言葉に、思わずくだらねぇ、と思ってしまう。
「お願いきょーちゃん!彼女いたことあるんでしょ!?何か………ないの?」
「あるかふざけんな出て行け!!そして金輪際きょーちゃんなんて呼ぶな!!」
「いやーん!見捨てないでーー!!!」
本当に鬱陶しい。朝の5時にいきなり部屋に入ってきて叩き起こされて、ずっとこうだ。
だから嫌いなんだよ…コイツ
「ウーッ!きょーちゃんの不登校!ニート!ネット民!重課金兵!!」
「つまみ出すぞクソやろう!!!」
ホント、何なんだコイツは……確かに不登校だし、ニートだし、ネット民だし……今月の課金額は万単位だけどッ!!
「………その問題、何とかしたらいいのか」
「何とかしてくれるの!?」
何てチョロい奴。目の色が一瞬で変わった。
それを何とかして大人しく引き下がってもらおう。
「あぁもう、てことは学院行かなきゃなんねーのか。おいあんず、着替えるから出てけ!」
「はーい!」
外に放り出して、身支度をする。
………最後に学院に行ったのは、いつだ…?
学院に行った最後の日のことを思い出そうとしたが、やめた。
やめよう。今は妹の恋路だ。………クソ面倒くさいけど。
着替えてから朝ご飯を食べ、弁当を鞄に詰め込んだ。(母親が俺の弁当を作るのは久々なのでやけに張り切っていた)
「うし、行くか」
「………その格好で?」
「あ?」
何かダサイだろうか。慌てて確認するが、ちゃんと普通に着こなせている。
「髪の毛だよ、髪の毛!」
「………このままじゃ駄目か」
「駄目に決まってんじゃんニートって名札つけて歩いてるようなもんだよ!?」
ろくに散髪屋にも行ってないので髪は伸び放題。仕方なく櫛でとかしてポニーテールにくくった。
「…………満足か?」
「うん!」
「………んじゃ行くか」
張り切って俺の腕を引っ張る妹と真逆に、俺のテンションは下がっていった。