第29章 お姉様?お姫様?____彼女だよ 朱桜司
「ふ~ん、あんずちゃんそんなお仕事来たのねえ?」
え、と顔を覆っていた手を離した。目の前には嵐くんとイズミン。
………………ま、さ、か
「モデルたるもの、どんな仕事でもこなさなきゃだよねえ?もちろんOKするんでしょ?」
あんた本当の悪魔だよイズミン。
嵐くんまで巻き込んで何やってんのあんた。
「そ、そうだね。OKしようか。やってみようか。新しいドア開こうか。ちょっとお腹の肉そぎ取ってくる。」
さすがにもう限界。その場から去ろうとしたら、嵐がガッと肩を掴んできた。ギリギリと力がだんだん強くなる。
「大丈夫よお、そのままで!十分細いじゃない、ねえ司ちゃん?」
そこで彼に話をふるのはやめて!?
未だ石のように固まってるのよ!?私が小学校の時演じた石のようにね!?
「………ま…せん…」
「………え?」
フルフルと震えながら彼はキッと私達を睨んではっきりと言った。
「私以外の者がお姉様のそんな姿を見ることは許せません!」
「………」
「………」
「………」
今度は私達が石になった。いや、ちょっと違う。私だけ石になって砕け散った感じかも。
「………え、私以外って………まさかもうそんなところまで……」
「イズミンちょっと黙ろうか。」
「そうよ泉ちゃん!あまり詮索したら可哀想よ!これは二人の問題で…」
「嵐く………嵐お姉ちゃんも何か色々違う……」
本当にやめていただきたい。二人にツッコんでいたら、司くんがタックルの勢いで抱きついてきた。
「お姉様、すぐさまお断りください!というかどこの畜生ですかそんな仕事を依頼したのは!!この司の………いえ朱桜家の総力を上げてそいつを破産に追い込んでやります!!」
「いや、そこまでやらなくても………というか、ぐるじいッ………!!!」
ギュウギュウ抱きしめすぎたことに気づいたのか、司くんは即座に離れた。
恐るべき末っ子の馬鹿力……