第29章 お姉様?お姫様?____彼女だよ 朱桜司
「お姉様!」
彼はいつも通り無邪気。………ムカツクほどに。
「今日は期間限定のsnackを……」
「司くん」
このままではお菓子の話を熱弁される。危機を察して言葉を遮った。
イズミンって本当意地悪。真、絡まれてたら私が助けてあげるからね。絶対に。
「……私、モデルのお仕事が来たんだけど…」
「model?しかし、お姉様はやめられたのでは…」
「まあ、うん…?その、やめたっていうか休業してるっていうか……。微妙な感じであやふやにしてたらお仕事が来てね……」
これは本当だ。しかし内容が内容なだけに即効でお断りしたのだが………
ここからがイズミンの意地悪さ発揮である。
「そうですか…。お姉様がモデルをやっていた頃の写真をみたことがありませんし、その仕事が終わればぜひ、見せて………」
「ダメ!」
イズミンに教えられたとおり、演技モードに入る。あぁ、私がこんなの苦手って知ってるくせに。
小学校で全員参加の劇があったとき与えられた役が石だからね。セリフも動きもなかったからね。最初から最後まで丸まってただけだからね。
それでも中々様になっているのか、司くんは信用している感じだった。
「ダメなどとおっしゃらず、見せてくださいまし!」
「ダメだよ…………あんな写真、見せられないもん……」
あ、何か恥ずかしい。本当に真っ赤になって両手で顔を覆う。
私にやって来たのは水着の宣伝用の撮影。そんな物撮れるかと即効でお断りしたのだが、どうも相手側がしつこく完全には断り切れていない。
なので試しに電話してやりますとか言った瞬間に仕事が決定するくらいにはなっている。
「……」
司くんがピシッと固まった。
…………これ、逆効果じゃないの………イズミンよ……