第29章 お姉様?お姫様?____彼女だよ 朱桜司
「え?司ちゃんに変わったこと?」
「そうなの、何か知らない?」
次の日、放課後に隣のクラスの嵐くんに問いただした。彼とはモデル時代から仲が良かったから話しかけやすい。
イズミンのやばいという言葉が私はどうしても忘れられなかったのだ。
「うーん…………ごめんなさい、特に思い当たらないわ。」
悪いと思ってる気配もなくサラッと謝る。
どこか早く解放してくれといったオーラが出ている。これは………
「椚先輩に会いに行くの?」
「そう!よく分かったわね!今日こそゆっくりとお話がしたいのよ。」
熱意に燃える嵐くんに頑張れ、とエールを送る。去り際に彼がそうそう、と
「嵐くんじゃなくて、嵐お姉ちゃん。」
コツン、と私の頭を軽く叩いて去って行った。
………モデル歴は私の方が長いのに、お姉ちゃんって。
まあ、もうモデルはやめてしまったけれど。
叩かれたところを特に痛くもないがさすっていると、廊下に………彼の声が轟いた。
「お姉様あぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーッ!!」
満面の笑みで、購買の袋を両手いっぱいに抱えこみこれでもかとその瞳を爛々と輝かせて………
司くんは走ってきていた。生徒会に怒られるよ、と言う間も私に与えず、彼は私のすぐ目の前までやって来た。
「…………またお菓子の大人買い?」
「はい、お姉様もご一緒にどうですか?」
まだチラホラと教室に残っているクラスメートが、何事かと見てきたが、いつものことなので苦笑いされた。
真なんて頑張れ、とガッツポーズまでしている。
助けて。
今度イズミンに絡まれたときに助けてあげるから助けて。
「さぁ参りましょう!お姉様!」
「あのさぁ司くん………」
私はもうやばいとか何とかいいや、と思いズバッと言ってやることにした。
「お姉様、やめて」