第28章 演劇部には近づかない方が良いかもしれない 真白友也
「あ、あのー…」
目の前では、にこにことスタイリストさん…とやらが微笑んでいる。
「まぁステキ!私の目に狂いはなかったわ!!あなた、私の担当雑誌のモデルをやるつもりはないかしら?」
「いえ、そういうのはちょっと……」
演劇部の衣装を新調するということで、プロの人にお願いしたらしい。
そのプロの人が演劇部にやってくる日と同じクラスの氷鷹くんに演劇部に遊びに来るよう誘われた日が
まさかのだだかぶりとは。
誰かの陰謀としか思えない。そう、あの長髪をたなびかせた演劇部の部長の。
「すてき、本当にすてきよ!ねぇ、皆にも見てもらいましょうよ。こんなにも綺麗なんだから!」
「あの………私、誰かに見られるのは苦手なのですが…」
「何言ってるの、勿体ないわ!ほら、ご覧なさい!」
とスタイリストさんは私を鏡の前に立たせる。どうやら、興奮してテンションがおかしくなってるらしい。
鏡にうつるのは、青いウェディングドレスを着て髪を結い上げた私。
なぜ演劇部にウェディングドレス!?とかツッコむ間もなくスタイリストさんの言われるがままに着替えたのだが。
似合ってない。
ヒールなんて普段履かないから歩き方は不格好だし、毎日髪を下ろしている私からしたら結い上げた髪は落ち着かない。
そして高級感溢れるドレスのせいで自分が惨めで貧乏に見える。
「皆さん、もう入ってきてよろしくってよ!とっても綺麗になったわ!!」
スタイリストさんがドアに向かって叫ぶ。あぁぁ、本当にやめてほしい……!
「おぉ……!見違えたな、あんず」
氷鷹くんに日々樹さんに真白くん。三人揃って褒めてくれるが……
「あの、私、本当に、恥ずかしい………!!」
私は消えてなくなりたかった。