第26章 先輩の家 青葉つむぎ
「じゃあ、飲み物を持ってきますね」
と朗らかに笑って先輩は部屋を出て行った。
部屋に残された私は一人、もんもんとなぜこうなったかを考えていた
「うーん、switchの衣装が間に合わなさそうだな……こんなにたくさん家に持って帰れないし……」
「HaHa~宙が手伝います!!」
「練習が終わった後なら出来るかもネ」
「それなら、皆で俺の家に来ますか?家族は今日用事でいませんし。」
そしたら夏目くんが…
『僕と宙は居残り練習をするからお二人さんは先に帰ってテ』
と未だかつて見たことない黒い微笑みを見せられてこんなことになったのだが。
早く来てくれないだろうか……
「お待たせしました~。すみません、麦茶しかなかったんですけど…」
「いや、全然!!ありがとうございます!」
震える手で麦茶をもらってゴクゴク飲み干した。私の心も知らず先輩はいつもと同じくニッコニコ。
「夏目くん達が、晩ごはんを買ってきてくれるそうです。今学院を出たそうで。」
「はぁ、そうですか…」
絶対夏目くんが言いだしたな。
しょっちゅう止まる衣装製作の手を必死に動かす。つむぎ先輩は進んでますか~?と覗き込んでくるので近い近い。
そして勘弁してほしいのが
「あんずちゃんあんずちゃんこれ見てくださいあんずちゃん」
やたらと構ってくださいモードなこと。緊張してるのもあるがこれのせいで手が止まってしまう。
「ほらほら~………………うわぁぁ!!!」
無視していたらそんな叫び声とガッシャーンという何かが割れる音がした。
「…………つむぎ先輩?」
彼はなぜか茶色い液体を頭から被っていた。そばには割れたコップが散乱している。
「うぅ、せっかくアイスコーヒー持ってきたのにこけちゃいました…」
いつの間に持ってきたのか、コーヒーを頭から被るなどどういうこけかたをしたのか、そもそもどうしてコーヒーを飲めない私にコーヒーを持ってきたのか、ツッコミが追いつかない。