第24章 無自覚は苦しい 乙狩アドニス
「あのわけのわからない連中は?」
「教師が発見して連れていかれたぜ。ったく、レオンがお前達を嗅ぎつけてくれたからよかったけどよう…」
大神が無理やりアドニスくんを引っ張って外に出した。くっついていたものだから私も引っこ抜かれた。
「てゆーか、逃げ場がなかったとはいえ良く二人でこんなとこ入ったな……。あんずに変なことしてないだろうな、アドニス?」
「変なこと?」
「大神~っ………!!」
そんなことを言われると今になって恥ずかしさが再来するじゃないか!!
私が力の限り睨みつけていたら、大神がサッと視線を逸らしてレオンの頭を撫でたりしていた。
「もうレッスンどころじゃねぇし荷物取りに行ってとっとと帰れよ。」
「……何だかんだでありがとう」
大神にお礼を言って、私達はレッスン室へ向かった。その道中に
「大神が言ってた、変なこととはなんだ?」
「…………………………知らない」
私が考えていることが大神が言っていた変なこととも限らないし、もう知らぬ存ぜぬで貫き通そう。
荷物を持って、帰ろうとしたが…洗濯しっぱなしのタオルを思い出した。
先に帰るように彼に言うと、心配そうに
「大丈夫か?」
と聞いてきてくれた。
「今日みたいなことはきっともうないよ。」
「そうか……」
彼は、やはりまだ不安なようで……。その顔を見たら、切なくなった。
「…………大丈夫だよ。」
私は遠くなっていく彼の背中にポツリと呟き、息を吸い込んで…
「もう強がらないから。だから、ちゃんと助けてって言うから。そしたら守って。お願い。」
聞こえているのかいないのか分からない。でも、アドニスくんは遠ざかる。
「了解した」
彼の、低い声が耳に届いた。遠かった彼が、いつの間にか隣にいた。
どうやって!?とか思う前に、自然と笑顔がこぼれてしまった。
あぁ、何て頼もしい彼氏なの?
中学時代の私、あんたには大神って友達がいて、大好きな家族がいて、頼もしい………愛すべき彼氏がいるよ!!
だから、辛くても諦めないでね。
届くはずのない過去の自分へエールを送り、私は最後の仕事に取りかかった。