第24章 無自覚は苦しい 乙狩アドニス
「あんず、もっと食え」
「もう食べられないよ~」
ANDEADのレッスンの昼休憩中に一緒にご飯を食べている。
アドニスくんは、お弁当の半分ぐらいを分けてくるのだが私は自分のお弁当を食べ終わったあとなので、もうお腹いっぱいだ。
「おいアドニスてめー、そいつにそんなに弁当やってたら自分の分がなくなるだろーが。あんずも足りねーならオレ様のパンをやるから…」
「ちーがーう!!何で私が足りないからもらってるみたいになってるの!?先輩達も笑ってないで何か言って下さいよ~。」
アドニスくんの隣に座っていた三年生二人はケラケラ笑っている。朔間先輩は昼にも関わらず珍しく元気だ。
「まぁ、アドニスくんも自分のご飯はちゃんと食べるがよかろ。嬢ちゃんもアドニスくんの気持ちを受けとって……この際じゃ、たくさん食べてたくましくなったらどうじゃ。」
「そうそう。たくましくならないと俺が食べちゃうからね~」
冗談めかしてそう言う羽風先輩と私の間にヌッとアドニスくんが割って入った。
「食べてもらっては困る。お腹が減っているならウインナーをやろう。」
「大神~、アドニスくんを止めてくださ~い?」
助けを求めるもら大神はひたすらパンを食べていて無視を決め込んでいた。
腹が立ったのでバシッと背中を叩いてやった。
「……アドニス、こいつのことは心配しなくてもいーぞ。ゴリラ女だからな。中学のとき何人かぼこぼこにしてたしな。」
大神は私を睨みながら腹いせなのか、とんでもないことを言いだした。
そのことは内緒って言ったじゃん……
「あ~、そう言えば二人は同じ中学だったね。あんずちゃんってスケバンだったの?」
意外と食いついてきた羽風先輩。それでも、ドン引きや驚いたりはしていないようだった。
「ちゃんと更生しましたから…」
とりあえず一番大事にことは言えたが、とんでもないカミングアウトになってしまった。アドニスくんは元の場所に戻って、ようやくお弁当を食べ出した
これ以上食えと言われたらどうしようかと思った。