第19章 思わず目を見開いた、あなたの正体 瀬名泉
ピッ、ピッ、ピッ____
無機質な電子音が聞こえる。
目の横にツーーと冷たいものが流れた。
涙だ。
何故か、体の頭からつま先まで……全てが動かなかった。
「…………ん」
聞き慣れた声がしたが、首も動かないからそれが
泉先輩の声なのかどうかは分からなかったが、とりあえず名前を読んでみることにした。
「ぃ………………………ず……………せん…………ぃ………」
何でだろう、声も全然出ない。
…………あれ?酸素マスクがしてある。
どう、し…て………………?
「…………あんず?」
私の視界に、泉先輩が映った。続いて、お父さん、お母さん、弟が……
皆、私を心配そうに見ている。
「……………わ、…………………た…し」
どうしたの?と聞こうとする前に、お母さんが涙声で話してくれた。
「あなた、事故に遭ったのよ。学校から帰る前、車に轢かれて………。」
……………そこで、ようやく思い出した。
あぁそうか…。確か、道路に飛び出した猫がいて、とっさに………。
「あんず、お父さんがわかるか?泉くんがな、ずっと側にいてくれたんだぞ…。お父さん達、先生を呼んでくるからな。」
お母さん、お父さん、弟は病室から出て行った。3人で行く必要はあったのか?しかし、弟がニヤニヤしていたのを見ると泉先輩と私を2人にしたかっただけのようだ。
「…………全く、心配かけさせるよね~ホント。」
たくさんつながれた点滴の管に触れないよう、先輩がソッと優しく抱きしめてくれた。
…………何だか、とても幸せな夢を見ていた気がするが…気のせいだろうか。
まぁそんなことどうでも良いか。
今は、先輩の温もりがとても心地よいから………
それに、甘えていよう。