第19章 思わず目を見開いた、あなたの正体 瀬名泉
「急がなきゃ!急がなきゃっ!!!」
ドタバタ落ちつきなく走る足音が聞こえて目を覚ました。
……………あれ?私寝ていたかしら?
しかも、大木にもられかかって眠っていた。根っこだけで私ぐらいはある………頂上が見えないほど大きい。
それに、走り回っているのは…
「………王様?」
「うおっ!何だお前!?宇宙人か!?いや、よくよく見たらアリスだな!って急がなきゃ!急がなきゃ急がなきゃ!!!」
「………アリス?」
王様が変なのはいつものことだが今日は更に変だわ…。
ウサ耳をつけて………何だか見たこともない衣装を着て。
急がなきゃ急がなきゃとグルグルと世話しなく走り回っている。
…………それに、王様だけでなく今いるこの場所も変だ。
「あの、王様…ここはどこですか?森…ですか?」
「ん!?何言ってるんだ!王様って誰だ!?俺はウサギだ!急がなきゃ急がなきゃ!!!」
駄目だ、話が通じない。
「急がなきゃって……さっきから一歩たりとも進んでいませんよ?」
「だってしょうがないだろ!!アリスが邪魔なんだから!!早くそこを退いてくれ!!」
ヤレヤレ、と渋々立ち上がる。
「おぉ!やっと退いたなっ!それ、ドーーーンッ!!!!」
王様が突進して私を押してくる。待って、このままじゃ大木にぶつかるっ……!
「_____ぇ」
ぶつからない。大木に、ぽっかりと黒い穴が開いていた。
穴から私と王様は穴から落ちていく。
底にたどり着く前に、私は意識を失った。