第15章 夢見がち 鬼龍紅郎
「あんずから離れろって言ったんだっ!!!!!」
………………え
ずっと待ち望んでいた名前呼びが実現した。夢にまで見た名前呼びが………。
「ククク、そんなに嬢ちゃんが大切かえ?致し方あるまい。ほれ」
零先輩が唐突に私を押した。
「さて、せっかくの食事を逃してお腹がすいたのう…。ガーデンテラスにでも行くかの。」
と言って零先輩が部室から出て行った。
まさかあの人、これを狙って…………!?
「おい、大丈夫か」
「は、はい……」
「おら、前閉めろ。」
制服のボタンを閉めてご丁寧にリボンまでつけてくれた。
「…………どうせ、芝居だったんだろうが………やっぱりいい気はしねぇな。」
「………?」
「鉄から聞いたよ。水臭ぇな、それくらい言えよ。いくらでも呼んでやるからよ…あんず。」
その瞬間、何だか舞い上がって嬉しくなった。夢にまで見た名前呼びが、現実になった!!
「あの、これからも名前で呼んでくれますか!?」
「………別に構わねぇが」
やったぁぁぁっ!!と心の中でガッツポーズしていると、紅郎先輩がカプッと耳をかじってきた。
「………………っ!?」
しばらくしたら離してくれた。なんだ、いったい……
「言ったろ、いい気はしねぇって………。ベタな消毒しといた。」
それを聞いた瞬間、先輩の髪の毛みたいに真っ赤になってしまった。
…色々とズルいです、先輩っ