第15章 夢見がち 鬼龍紅郎
夢で先輩と会った。夢って分かってるけど、先輩と会えて嬉しいからやけに私ははしゃいでいた。
「あんず」
先輩がしゃべったのはそれだけ。
いつも嬢ちゃん嬢ちゃんと呼ばれていたから、不覚にもときめいた。
その日は幸せな夢だった、とニンマリしながら一日を過ごしたものだ。
しかし現実は
「お、来てたのか嬢ちゃん」
「…………はっ!こんにちは先輩」
あんず、夢から現実へ戻って参りました。
「色々衣装の注文が来まして、その中に先輩に頼みたいというのもあったのでそれを伝えに来ました。」
「悪ぃな。鉄、ちょっとこっち来い!」
隅っこで練習していた鉄虎くんを呼び寄せて、一つ提案をした。
「おごってやるから、ガーデンテラスにちょいと付き合え。嬢ちゃんも、話し合いはそこで良いな。」
「おぉ!まじっすか………ていうか、二人の話に俺が混じってもいいんすか?」
「見たところ、鉄の……流星隊の衣装だろ、意見聞かせろ。」
「了解っす!」
というわけで、二人が着がえるのを待ってガーデンテラスへ向かった。
「んで、ここはこうして欲しいっす」
「え、そんなの出来るんですか?」
「ちと難しいがな…今度教えてやるよ。」
とか何とか話して、だいたいまとまった時に…
「あーいたいた、探したぞ~。紅郎ちん、進路相談次だから早く教室行けよ~。」
「…?」
「進路相談らよ、進路相談」
「あぁ、すっかり忘れてたぜ。悪い、だいたい決まったし……それ食ったらもう帰ってくれ。」
「はい、おごってくれてありがとうございました。紅郎先輩。」
呼びに来た仁兎先輩とともに去っていく先輩。先輩がおごってくれたパンケーキを鉄虎くんとつつく。
「姉御と大将は付き合ってるんすよね?」
「そうだけど…急に何?」
「大将って、姉御のこと嬢ちゃんって呼んでるっすよね?」
「……………現実じゃ名前呼ばれたことないかも」
現実ぅ!?と食らいついてきた彼に夢のことを話してみた。