第14章 オオカミ彼氏 大神晃牙
「やっほー、あんず」
「凛月くん」
音楽室で、彼と会った。零先輩から、仕事がないなら頼み事を聞いてくれと言われたのだ。
どうも最近、色々と無理をしていたらしい。彼が語ってくれた。
「零先輩がね、棺桶用意してるんだよ」
「……どうせならベッドとかがよかったよ…。ねぇあんず、安らかに眠れるようにピアノを弾いてよ。」
「え?良いよ。猫踏んじゃったしか弾けないけどそれで良い?」
「…………それなら、子守唄がいいな。」
凛月くんはそう言って棺桶の中に入っていった。
子守唄を歌っていると、凛月くんが衣装の袖をチョコンと掴んできた。
「子守唄上手だね、あんず。ピアノは今度教えてあげるね……夜になったら起こして…寝るまで……ここに…い…てね……」
そう言って、スゥスゥ寝息を立てた。
一瞬で寝てしまった。寝るまで…とか言ってたけど、もう良いかな。
にしても、可愛い寝顔だなぁ。写真撮りたいくらい。
そんかストーカーまがいな考えを断ち切り、立ち上がる。夜になったら起こしに来よう。
凛月くんが起きないようにソロリソロリと音楽室を抜け出した。
さて、まだ仕事するまで時間がある。晃牙くんはハロウィンパーティー前だし………。
「trick or treat !!!」
静かだった廊下が、騒がしくなった。
私に手を伸ばしてくる仮装した子どもたち。何て可愛いんだろう!!!
「皆、チョコレートでいいかな?」
「うん!!」
「ありがとうなぁ、お姉ちゃん!!!」
どうやら関西の子達らしい。隣のクラスのみかくんが話しているイントネーションと同じだった。
「んあぁっ!!こんなとこにおったんか!」
「あ、みかくん。」
「あんずちゃん?あ、お菓子くれたんやね、ありがとう~。ごめんなぁ、俺今お返しできるもん持ってへんねん。また今度な。」
どうやらこの子たちみかくんの知り合いらしい。もっとちょうだいもっとちょうだいとねだってくるので、葵兄弟からもらったバスケットは空っぽになった。