第14章 オオカミ彼氏 大神晃牙
「ったく、テメーはよぅ…」
「…?」
「あー、何でもねーよ!!」
夏目くんと別れてからずっとこんな調子。私、何かしただろうか…。
「…つーか、仕事は」
「え?あぁ、もうこんな時間か。」
そろそろ動き出さないといけない時間だ。
「おぃーっす」
突然後ろからギュウッと抱きつかれた。声的には凛月くんであろう。
「おわっ!?」
晃牙くんも驚いたようだ。
私は声が出ない。
ジェットコースターとか乗るとき、本当に恐い人は声を出さないとか言うけど…私は完璧そうだった。
本当に驚いたり怖かったりすると、全く声が出なくなる。
「おい、あんずがビビってるだろ…。驚かすのやめてやれよ。」
「えー、だってあんずの反応面白いんだもーん。声に出さない分顔とか態度に出るもんね。」
それよりか、とても重いのでさっさとどいて欲しい。
「ていうか、何か用かよ。」
「うん。あのさぁ、俺ハロウィン用のスイーツ作ったんだけど不評なんだよね。だから作り直したいんだけど改善点が分からなくてさ。二人に意見を聞こうと思って。」
ようやくヒョイッと離れてくれた。
「てなわけで、はいあんず。あーん」
「…自分で食べ………んっ!!」
しゃべってる途中に無理やり口に入れられた。
…………あれ
「…すっごくおいしい!!!」
「でしょでしょ、何で不評なのかなぁ?」
「…………おい、今…、こいつに何食わせた……?」
晃牙くんがどことなく青ざめた顔で凛月くんにそう尋ねた。
「え、これだけど。」
それを見た瞬間、声が出なくなった。
何か、言葉にできないものが皿の上にあった。
「明らか味より見た目だろ!何でそうなった!?」
「ひどいなぁ。そんなに言うなら……!」
凛月くんが足払いして晃牙くんを転ばせた。
「あんず、馬乗りになって。」
「え」
「ほら早く。こうでもしないと食べてくれないっぽいからね。」
凛月くんは早くしろと言わんばかりに晃牙くんを押さえつけた。