第14章 オオカミ彼氏 大神晃牙
「大神先輩!見てみてーーーっ!!!」
「じゃじゃーーーんっ!!!!」
ハロウィンパーティー当日。一人だけ制服で完全アウェーだったところに、双子が演劇部から私用の衣装を持ってきてくれたのだ。
着がえた私を見て二人は大神先輩に見せようっ!となり………現在にいたる。
「………どう、かな…?」
「………良いんじゃねぇの。」
ボソッとそう言われてポン、と1回だけ頭に手を置かれた。
「どーですか俺達のチョイスッ!先輩がオオカミならあんずさんは赤ずきんでしょーっ!?」
「それでいくと俺様は死んじまうだろうがッ!!!」
「ほらアニキ!邪魔者は退散するよーっ!」
「そうだね!じゃお二人さん、ご、ゆっ、く、り!!」
双子はワチャワチャするだけして走り去ってしまった。
残された私達は何だか少し気まずい。
「……すごく可愛いよね、この服。演劇部の誰が着るのかなぁ?」
「……ぞ」
「え?」
あーもーっ!と晃牙くんがセットした髪をかきむしる。
「テメーも可愛いっつったんだよっ!!!二度と言わねぇからなっ!!」
そう吐き捨ててズンドコズンドコ先に言ってしまう晃牙くん。私は頭に被ったずきんみたいに真っ赤になりながら、彼を追いかけた。
「ちょっト、お二人さン」
そんな私達に声をかけてきたのは夏目くん。彼はニヤニヤしながらお決まりの文句を言った。
「trick or treat … ☆」
早く早く、と手を差し出してきた彼。お菓子か…
それなら葵兄弟から衣装と一緒にもらったバスケットの中にたくさん入っている。
「チョコレートで良い?」
「駄目だヨ、そこはないって言ってイタズラされなキャ。」
「ん!?」
訳が分からない。晃牙くんはメンドクセェ…と言いたげな顔をしている。
「男の子は女の子にイタズラしたいんだヨ!」
「……?そうなの?」
「俺様に聞くな!てかテメーも変なこと言ってんじゃねーよっ!」
何だかよく分からないけどしょうがない。私はバッと両手を広げた。
「……何してんだ?」
「さっ!イタズラしていーよ!?どんとこい!!イタズラって何かよくわかんないけど!」
「アホかテメーふざけてんのかっ!!」
「じゃあ遠慮なク…」
夏目くんが一歩近づいて来たが、晃牙くんが引き離してしまった。