第11章 今日こそは私とデートしてください ー羽風薫ー
「あんず」
「レオがや~さ~し~い~!明日は台風だ~!!」
「はぁ!?なんだそれ!いや待って!くるっ!インスピレーションーーーーッ!!」
「前言撤回!!レオはレオだねっ!!」
私は感動の涙を引っ込めて崩れるように再びイスに座る。
しかしレオは、私にトドメをさしてくる。
「こらこら、またルカたんに幼稚園児って言われるぞ?」
「あーっ!言わないで!気にしてるんだから、本当!!」
何カ月か前、レオの家に遊びに行ったらルカに呆れたように「あんずちゃんって、幼稚園児みたい」と言われてしまったのだ。
「良いんじゃないか?子供でも何でも、あんずはあんずだろ!」
「……」
私は黙ってレオの耳を引っ張った。
「痛い痛い!!何で引っ張るんだ!!あ、待って答えないで!」
「ムカついたから!!」
「即答!?」
レオの耳を離して私は鞄を持った。
「帰るのか?」
「レオがウザいから帰る」
「なんだそれ!面白いヤツ!!」
「や、あんずちゃん」
昇降口で出会った薫さんはいじっていたスマホをフラフラ振って私を呼び寄せた。
「また月永くんと遊んでたの?いいね、楽しそう!」
「そういう薫さんはここで何してるんですか?」
「偶然だよ。」
バチッとウインクして笑う薫さん。
「あんずちゃんが中々捕まらないからさ」
ホラホラ、と手を繋ごうとしてくる。私は恥ずかしくて御免被りたかったのだが無理やり繋がれてしまった。
「やっと偶然成功!あんずちゃんが校舎の壁を走ってたり窓から窓をつたってたり屋根の上走ってたりで全然巡り会えなくてさー…。好きにしたら良いと思うよ?でも、怪我はしないでよね。」
………なに
私が偶然しようとしてたのにそのせいで薫さんが偶然出来なかったと、そういうこと!?
ポカンとしている私に薫さんはどうしたのかと尋ねてくる。私はさっきの真似でウインクしといた。
でも、できなくて薫さんは笑うし。
あぁもう、散々だなぁ…
薫さんに振り回されてばっかだよ