第13章 Mic check!(黄瀬涼太)
「ごっ、ごめんね、中途半端で……」
「いや、そうじゃなくてもう限界で」
ワンピースを捲られて、下着と肌が晒された。
ホックの外れたブラは、もうルームウェアの付属品かのようにあさっての方向にいってしまっている。
私だけかな、なんか、結婚・出産してから更にこの行為が恥ずかしくなった。
一日の殆どの時間をそれぞれ"父""母"の顔で過ごしているのに、夜だけ女の顔を見せるのがなんか物凄く気恥ずかしくて。
しかも、毎日が慌ただしすぎて、たまにする頃にはどうやってするものだったか、忘れそうになってしまう。
よく考えたら誰だってそうなのかもしれないけれど、下着を見せるのも裸を見せるのもすごく恥ずかしいのだ。
若い頃と違ってあちこち弛んでしまっているから、余計に。
涼太が、Tシャツと私が乱したスウェットと下着を脱いで放り投げた。
鍛え抜かれた身体に、思わず釘付けになる。
涼太は全然変わらない。
むしろ、若い頃より磨きがかかってる。
もうずっと、ずーーっと格好良い。
私も少し鍛えたりはしてるけれど、足元にも及ばない。涼太はまるで芸術品みたいだ。
私のルームウェアも脱がされて、二人とも何も身につけていない上半身が重なる。
唇よりも、ずっとずっと熱い。
まだ脱いでいないショーツの中が、大変な事になっているのを感じる。さっき、涼太のを口でしている時からずっとジンジンしてた。
あったかい……。
大好き……。
絡まる舌を必死に吸っているうちに、そのショーツもいつの間にか剥がされていた。
唇を合わせたまま、お互いの存在を確かめるように身体に触れ合う。
激しさのないゆっくりな行為が、快感と共に安心感も生んでくれる。
いつか涼太が言ってくれた。
セックスはコミュニケーションだって。
夫婦になった今では生殖行為としての側面も勿論あるけれど、こうやって肌が触れ合うだけで、悲しいことも辛かったことも、すごく軽くなる気がするんだ。