第2章 海と大地のまんなかに。
『おはようございまーす!まなか迎えに来ましたー!』
いつものように玄関の扉を開けて叫ぶと、まなかママの「はーい」と言う優しい声と、二階へと続く階段の奥からパタパタと軽い足音が聞こえてきた。
これもいつもと変わらない、ごく普通の日常だ。
ただ、今日からひとつだけいつもと違うことがある。
それは、今日から私達の通う学校が陸の学校になるということ。
陸の世界には、知らない人や知らないものがたくさんあって少し怖い。
だけどずっと、海の向こうの世界に憧れていたのも本当で、今日を待ち望んでいた自分もいる。
(……楽しみだな)
頬が緩むのを感じながら、だんだんと大きく聞こえてくるようになった足音につられて二階へと続く階段に目を向けた。
「おはよー…、まーちゃん…」
階段の途中で顔を覗かせて、緊張した表情で笑顔を作っているまなかは誰が見ても不自然だ。
『おはよー…!』
恐る恐るといった感じでゆっくりと階段を下りて来たまなかの姿が上から下まで見えるようになった時、私は思わず目を見開いた。
『まなか、……その格好…』
私の言葉に一瞬肩を跳ねさせたまなかは、またゆっくりと足を動かして私の目の前までやって来た。
「……えへへ…」
誤魔化すみたいに笑うまなかの着ている制服。
それはどう見ても、今私の着ている波中(波路中学校)の制服ではなかった。
ベージュのベストにオレンジ色のタイ、そして茶色のスカート…。
あまり見慣れないその制服は、今日から私達が通うことになった陸の学校、濱中(美濱中学校)の制服だった。
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