第80章 想いを示すなら百の口説き文句より一の態度
・・・・葵咲。
私を呼ぶ声が聞こえる。
懐かしくて、心地良い声。
待って。ねぇ、何処にいるの?
私は辺りを見回した。
暗闇に浮かぶ人影。
いつも傍にあった温もり。
その人影は私に優しく微笑みかける。
フッ。
影はそっと微笑んだ後、私に背を向けて闇の中 歩き始めた。
お願い、行かないで。
その背を追うのは・・・・過去の葵咲(わたし)。
葵咲は過去の自分を客観的に見ていた。
過去の葵咲は必死に、その去り行く影を追い掛ける。
お願い、待って。
そう、叫びながら。
ダメ、行っちゃダメ。
葵咲は過去の自分に呼び掛けるが、過去の自分に今の葵咲の姿は見えていない。
仕方なく、葵咲は過去の自分を追い抜き、去り行く影を追い掛けた。
そしてその姿を捉えた葵咲は息を呑む。
影はその手に…血濡れた刀を携えていた。
待って、ねぇ、何処??
過去の自分が追い付いてくる。
ダメ、こっちに来ちゃダメ…!
ダメェェェェェェェ!!