第79章 普段お母さんがしている仕事はお父さんには出来ない。
自分の居場所は確かにここにある。その事がとても嬉しく思った。
葵咲「…ありがと。けど、総悟君の代わりもいないよ。誰も誰かの代わりになんてなれないから。」
総悟「フッ。葵咲、出逢った頃の台詞と矛盾してるぜぃ。俺に姉上の代わりになるって言ってたのは何処の誰ですかねぇ。」
葵咲「あはは、そうだったね。」
出逢った当初の事を思い出した。そういえばそうだ。葵咲は確かに総悟の姉代わりになると言った。その矛盾が自分でもおかしくなった。クスクスと笑みを零す葵咲を見て、総悟は安心したような表情で静かに立ち上がった。
総悟「その様子じゃあ、もう大丈夫そうですねぃ。俺ァパトロールにでも行ってきやす。」
葵咲「うん。ホントありがとね。いってらっしゃい。」
総悟は葵咲に背を向けたまま、右手をヒラヒラ振りながら部屋から出て行った。
葵咲は伸びをして深呼吸をした。そして昨日は何もしなかった分、今日はしっかり仕事をするぞと心の中で誓い、着替えを済ませる。
部屋を出て食堂、庭、その他屯所の各所を見て、葵咲は言葉を失った。
葵咲「・・・・・。」
本当に仕事が山程あった。隊士達が気を利かせてしてくれた仕事は余計なお世話でしかなく、全てやり直す必要があった。
葵咲は体調管理は何よりも大事だと改めて実感したのだった。