第79章 普段お母さんがしている仕事はお父さんには出来ない。
結局土方は戻ってこなかった。
葵咲の看病は総悟が一晩夜通しで行なった。
翌朝。
朝日の光を受けて、葵咲が目を覚ます。
葵咲「…ん…っ。」
総悟「あ。気が付きやしたか?」
うとうとしていた総悟だったが、葵咲が目覚めた事で総悟も目を覚ました。総悟の声を聞いた葵咲は彼の方へと目を向ける。
葵咲「あれ、私…。」
総悟「高熱でずっと寝込んでたんですよ。」
葵咲「そっか。」
次第に意識がはっきりしてくる。銀時や新八、隊士達が仕事をしてくれていた事を思い出した。そうか、その時熱が上がって倒れたのだと記憶が繋がる。
葵咲が記憶の整理をしていると、総悟が葵咲の額に自らの額をコツンと当てた。
総悟「熱も下がったみてーだ。」
葵咲「ちょ!顔近…っ!熱は体温計で測るから!」
少女漫画とかでよくあるやつだ。だが額と額を当てて本当に熱が分かるのか。そもそも手を当てれば良い話。総悟は熱を計る為というよりは葵咲に近付きたくて額をくっつけただけだ。葵咲は耳まで真っ赤にし、慌てた様子で顔を離す。総悟はべっと舌を出して手を上げた。
総悟「今俺体温計持ってないんで。」
葵咲「…っ。移るかもよ。」
眉尻を下げ、少し申し訳なさそうな顔をしながら布団で口元を隠す。そんな葵咲の様子を見て総悟はフッと微笑を零した。
総悟「移しちまやぁいいんでさァ。その方が早く治るって言うでしょ。」
葵咲「そんなわけにはいかないよ。」
総悟「俺の代わりはいくらでもいる。けど葵咲にしか出来ねぇ仕事ってのが山程あるんでぃ。葵咲には早く元気になってもらわねぇと困る。」
葵咲「総悟君…。」