第78章 天は二物も三物も与えはしない。
華月楼での騒動が嘘のように平穏な時間が流れていた。
そんなある日、銀時はA4サイズの封筒を片手に、とある場所へと足を運ぶ。
訪れた先は診療所。真選組のお抱え専属医となった松本短英が運営する松本クリニックだ。
この数日前、銀時は健康診断を受診していた。華音との戦闘において、幻術世界に誘われるという術を喰らった為、身体に異常をもたらしていないかを調べる為である。
そしてその検査結果が出たので、松本の元へと持ち寄ったというわけだ。
銀時はいつもの死んだ魚のような目で診療所の扉を開ける。
銀時「ちーっす。」
扉を開けて態度は一変、水を得た魚のように、その目は生き返る。銀時は瞳を大きく開いて目の前の光景に唖然とした。
銀時「・・・・・。」
とても病院の待合室とは思えない情景に目を疑う銀時。病院とは静かな場所ではないのか。いや、確かに人気の高い病院は人で溢れている。だがそれは治療の為に訪れるご老人や子どもが大多数のはず。松本クリニックの待合室に溢れていたのは若い女性ばかりだったのだ。
銀時が入口付近で呆然と立っていると、たまたま診察室から出てきた松本が銀時の姿に気付き、声を掛けた。
松本「あぁ、こんにちは、銀時さん。」
白衣を着た松本の姿を見た待合室の女達は、次々と黄色い声を上げた。
「キャーッ!菊之丞様ァァァァ!」
「ちょっと!もう菊之丞様じゃなくてよ!」
「短英先生ィィィィ!!」
「私はここですぅ!こっちを向いてェェェ!」
銀時「何ここ。ライブ会場?ホントに病院か?」