第75章 大物が釣れたら後の魚への興味は一気に失せる。
一連のやり取りを終えて銀八が再び妙へと目を向けると妙がにっこり笑顔で答えた。
妙「今日は土方君の家で一緒に勉強するんですって。」
銀八「…え。不順異性交遊反対ィィィィ!!」
一瞬目が点になった銀八だが、妙の言葉を理解して叫びだす。それに対して妙は眉根を寄せて銀八を睨んだ。
妙「何言ってるんですか。二人は勉強…」
銀八「んなの建前に決まってんだろ!それを理由に連れ込んでいやらしい事するつもりなんだよ!男の魂胆なんて見え見えなんだよ!!下心がチラッチラとカンニング…」
銀八の中に不思議な感覚が沸き起こる。初めて放ったはずの台詞。
だが前にも言った事があるような…そう思った次の瞬間、ドクン!心臓が大きく脈打つ感覚に見舞われる。
銀八「うっ。…なんだ、今のイメージ…。」
心臓が脈打ったと同時に、見た事のないはずの縁日の風景が頭の中に突如浮かんだ。銀八は記憶を手繰り寄せようとするも、思い当たる節はない。
怪訝な顔を浮かべて押し黙っていると、妙が心配そうに銀八の顔を覗き込んだ。
妙「先生?」
銀八「え?ああ、いや…なんでもねぇ。」
きっと気のせいだろう、そう思い、銀八は右手で頭を摩りながら浮かんだイメージを振り払った。妙は少し不思議そうな顔を浮かべている。そして浮かんだ疑問をストレートにぶつけた。
妙「珍しいですね、先生。」
銀八「あ?」
妙「ガキの色恋なんざ興味ねぇって、目の前で生徒がラブホに入っても無視してたのに。」
銀八「それはマズくね?俺の先生キャラどんな設定なの。」
それは先生としてという前に、一人の大人として如何なものだろうか。そんな風に思うと少し哀しくなる銀八だった。
(銀八:でも確かにそうだ。んなめんどくせぇ事に今まで自分から首突っ込んだ事なんかねぇ。なんで…)