第72章 誰もが心にラフテルを描いている。

葵咲「お察しの通り、こんな場所にも一番に突入しちゃう一番隊隊士、市村葵咲でーす。…あっ。今日からは真選組薬中の市村葵咲にした方が良いですか？」

菊之丞「真選…組…？」


葵咲の正体が警察関係者、ましてや真選組隊士などとは微塵も予想していなかった菊之丞は、驚きの表情で呆然とする。
鳥居は半分やけくそ状態で取り巻きの侍達に指示を出す。


鳥居「くそっ！ええい構うな！そんな三刀流賞金稼ぎ気取りの奴らなんざ叩き斬って揉み消してしまえェェェ！！」

土方「誰がゾロだコラァァァァ！！」


真選組VS花魁に扮した侍達。両者が動き出したのと同時に、土方は腰に下げていた葵咲の愛刀、雪月花を葵咲目掛けて放り投げる。それを見た葵咲は突如、菊之丞に大声で呼び掛けた。


葵咲「走って！！」

菊之丞「！！」


菊之丞は突然の葵咲の叫び声に一瞬背筋をビクリとさせたが、急いで立ち上がり、そのまま部屋の入口目掛けて駆け出した。
それを目に留めた侍のうち一人が、慌てて菊之丞の背を追う。


「くそっ！逃がすかァァァ！！」


侍が菊之丞の背を目掛けて刀を振り下ろすよりも先に、葵咲は雪月花を受け取ってその侍を斬った。


「ぐぁぁぁっ！！」


刀を抜いた葵咲は無駄の無い動きで次々に周りの侍達を倒していく。一方菊之丞は振り返る事無く、わき目も振らずに駆けて、入口付近に立っている山崎の傍へと滑り込んだ。そこでやっと菊之丞は葵咲の方へと振り返る。菊之丞の無事を見届けた葵咲はフッと微笑み漏らした。