第62章 どの組織にも型にはまらない奴がいる。
葵咲「分かりました。菊之丞って人に近付きます。深い関係にならない程度に。」
葵咲の言葉を聞いて、土方は山崎の胸倉を掴んでいた手を離す。ボコられる直前だった山崎はホッとため息をつきながら更に注意を促した。
山崎「ただ、菊之丞を指名するにしても獅童には注意してね。例え他の花魁の客だとしても獅童はお構いナシらしいから。気に入った女は奪い取る、そういう性格みたい。」
土方「そんときゃぁ、俺がそいつの命(たまァ)奪い取ってやるよ…。」
山崎「それただの殺人んんんんん!!!!!」
鬼の形相で刀を抜き出そうとする土方。それを見た山崎は青ざめながらツッコんだ。
そして葵咲も呆れ顔で土方へと言葉を掛ける。
葵咲「ちょっと土方さん、いい加減にしてよ。」
土方「んだとォォォ!俺は…」
誰の事を心配していると思っているんだ、その事を告げたかった土方だが、自分に向けられる葵咲の真剣な言葉に思わず口を噤む。
葵咲「私を誰だと思ってるの?」
土方「!」
葵咲「私は真選組一番隊隊士、市村葵咲。そんじょそこらの男に負けるような柔な女じゃないんだけど。」
昨日までの遊郭という場所をナメている葵咲ではない。それはその顔つきから分かった。その頼もしい表情を見て山崎も微笑を漏らす。
山崎「フッ。」
土方「…ったく、分ーったよ。もう好きにしろ。」
土方は髪をくしゃっと掻き、不服そうな顔を浮かべながらも葵咲を華月楼へと送り出す事にした。