第61章 契約書の小さい文字には重要な事が書かれている。
服部の言葉を受け止める銀時は、いつになく真剣な表情になる。銀時は服部へと向けていた視線を地面へと落とす。だが銀時からは口を割らなかった。服部は何かしらの情報を得たようだが、どこまで掴んでいるのか分からない。この状況では、墓穴を掘る事になり兼ねないと思ったのだ。服部もそれ以上深くは語らず、表面的な話だけを続けた。
服部「お前にとって市村が“大事な幼馴染”なのか“大事な女”なのかは知らねぇが、市村(あいつ)が危険に晒されるのは時間の問題だ。大事ならこれからも周囲に目を光らせておくこったな。」
銀時「お前に言われるまでもねーよ。どんな状況になろうが、俺はアイツを護る。それだけだ。」
地面を見据えていた視線を真っ直ぐ前へと向ける銀時。その瞳には硬く誓った決意が宿っていた。その様子は横顔からでも見て取れた。服部は少しの間銀時の横顔を見つめた後、腕組みしていた両手をポケットへと入れ、銀時に背を向けて縁側をゆっくり歩き出した。
服部「…まっ、テメー一人じゃどうにもならねぇってんなら、また請け負ってやらんでもないぜ。市村の護衛って任務ならな。」
銀時「お前…!」
服部の発言に思わず顔を上げてその背に視線を送る銀時。それに反応するかのように服部は振り返った。
服部「勘違いすんなよ。あくまで依頼があれば、だ。俺はボランティア精神はないんでな。」
銀時「フッ。ああ。頭の片隅にでも置いといてやらぁ。」
それ以上言葉を交わす事は無く、銀時は服部邸を後にした。