第61章 契約書の小さい文字には重要な事が書かれている。
その夜、新八、神楽、猿飛は先に帰宅するが、銀時は服部邸に残っていた。二人で話しておくべき重要な話があったからだ。銀時は縁側へと腰掛け、お茶をすすりながら月夜を見上げる。服部はその横で腕組みしながら柱へと身を預けて立っていた。
服部「そういやぁお前、市村と幼馴染なんだったな。」
銀時「ケッ。忍者ってのは悪趣味なヤツばっかだな。ストーカーに、個人情報収集癖かよ。」
ストーカーとは勿論猿飛の事。忍者に理想的イメージを抱いている葵咲と違い、銀時には悪いイメージしかない。だがこの意見に服部は反論を唱えた。
服部「俺ァ別に趣味でやってるわけじゃねーよ。しかしまぁ…“初恋の女”のピンチに駆けつけるたァお前の方がストーカー気質なんじゃね?」
服部から告げられるほろ苦い自分の過去に、思わず飲んでいたお茶を吹き出す銀時。右手で口を拭いながら顔を真っ赤にして激昂した。
銀時「余計な事まで調べてんじゃねェェェェェ!!しかも人の心の傷抉ってんじゃねーよ!!」
どうやら図星だったらしい。正直、服部が調べられたのは銀時や葵咲の過去の行動。当時銀時はその胸のうちを誰にも打ち明けていなかった為、心情までは他人に知られていなかったのだが、その行動からカマをかけたのだった。そしてこの慌てっぷり…服部はニヤリと笑ってからかうように更に一言付け加えた。
服部「あっ。悪ィ。もしかして現在進行形だった?」
銀時「余計な事言わんでいいわ!!」
いつもやられっぱなしの服部だが、ひとつ銀時に勝てた。いや、弱みを握れたと言っても過言ではない。もっとからかいたい気持ちはあるが、これ以上話が逸脱すれば本題を見失い兼ねないと思い、真剣な話に道筋を戻した。
服部「まぁテメーの色恋なんざ興味はねぇが…その様子じゃあ市村の事、気付いてんだろ?」
銀時「!」
服部「あの女が隠し持ってるネタは相当根深いぜ。」
銀時「・・・・・。」
今回の騒動で服部は密かに葵咲の身辺調査を行なっていた。当初の目的は敵の情報を得る為だったのだが、辿り着いた先はとてつもない闇だったのだ。