第40章 隠し事は案外バレている。
高杉との会話を終えた“謎の男”は、廃屋から出て夜道を歩く。その背後から万斉が男に声を掛けた。
河上「“古兵衛”。」
名を呼ばれた男は振り返る。
“古兵衛”はヘラヘラした顔つきで万斉の顔を見た。
古兵衛「ん~?どうしたの~?万斉ちゃ~ん。」
万斉はムッとした顔つきで古兵衛に近寄る。そして一言苦言した。
河上「その呼び方はやめろと何度も言ってるでござろう。」
古兵衛「んな硬いこと言うなよ~。俺達、友達だろ?」
河上「・・・・・。」
眉をぴくりと動かす万斉。サングラスをかけている為、その目つきは見えないが、その仕草だけで古兵衛は自らが睨まれている事を察した。そして両肩、両手を挙げて小さくため息を漏らす。
古兵衛「なんだよ、しらけるなァ~。」
河上「これが今度の取引に必要な材料でござる。」
そう言って万斉はピラリと一枚の紙を懐から出し、古兵衛に手渡した。その様子を見て今度は古兵衛が不満そうな顔を浮かべる。
古兵衛「おいおい、ガチスルーですかァコノヤロー。」
河上「『必ず集めて来い。』、晋助からの伝言でござる。」
なおもシカトされ続ける事で、古兵衛は観念したように頷いた。
古兵衛「へいへ~い。ったく、信用ねぇなぁ~。…ククク。」
古兵衛は万斉に背を向け、貰った紙をヒラヒラと振りながらその場を後にした。