第37章 自分を狙っている暗殺者は一人だけとは限らない。
暫くして葵咲が席へと戻ってきた。
銀時が戻ってきた葵咲に目を向けると、片手にはケーキの盛られた皿、そしてもう片方の手には謎のドリンクがあった。
葵咲はそのドリンクを銀時の前へとずいっと差し出す。
葵咲「銀ちゃーん、これあげる。」
銀時「・・・・・。何その禍々しいドリンク。」
まず色が悪い。黒、紫、茶色、深緑色等の暗い色を混ぜたようなどす黒い色をしている。しかも色が悪いだけではなく、何か煮えたぎるようにぐつぐつと泡が立っていた。とてもドリンクと呼べる代物ではないだろう。
葵咲「これ糖尿病に効くんだってさ。」
銀時「絶対ぇ効かねーよ。絶対毒入りだろそれ。なんかグツグツいってるもの。毒りんごとか作れそうだもの。白雪姫に出てくる魔女が持ってそうだもの。っつーか何処から持ってきたそれ。そんなんあったか?」
銀時は思いついた感想と疑問を全て並べ立てた。だが、そんな銀時の感想に、葵咲は全て答えるわけではなく、平然と今あった出来事を話す。
葵咲「さっきそこでお医者さんに貰ったんだよ。」
銀時「ケーキバイキングで医者?なんで医者って分かるわけ?」
更に問い詰める銀時。問い詰めるだけでドリンクを受け取ろうとはしなかった。葵咲は仕方なくそのドリンクをテーブルの上へと置き、ソファに腰掛ける。
葵咲「本人がそう言ってたし、白衣着てたから間違いないよ。」
銀時「白衣着てたから医者ってどんだけ安易なんだよ。それ科学者かなんかじゃね?何かの実験だろ。毒が即効性を持ってるか試そうとしてんだろ。」
白衣を着る職業にも色々ある。葵咲は糖尿病に効く薬を渡され、しかも本人がそう言っていたのだから医者と判断したが、銀時はドリンクを見て科学者以外の何者にも思えなかったのだ。
葵咲「そんなすぐ人疑っちゃダメだよ。良薬口に苦しって言うし、騙されたと思って飲んでみなよ。」
銀時「確実に騙されてんだろ。殺されそうだよ。医者ってどんな奴?」