第31章 旧友に忘れられて自分だけ覚えているのは何か悔しい
高杉との抗争から五日が経った。
葵咲は医者から全治三週間の診断を下され、病室にて安静にしていた。
何気なくつけていたテレビからは、今日もテロ事件のニュースが流れている。
草野「次のニュースです。今日未明、日本橋ビルにて爆破事件がありました。これは攘夷派、暁党による爆破テロと見られ、主犯と思われる男の行方は未だ掴めておらず…。」
淡々と原稿を読むアナウンサー草野の声を葵咲はしっかりと聞いていた。
葵咲がテレビに集中していると、病室の扉の向こうで男の声が上がる。
「おい、入るぞー。」
そうして病室へと入ってきたのは銀髪の侍、坂田銀時だ。
葵咲「あっ!銀ちゃん!!」
銀時の姿を見た葵咲は表情をぱっと明るくした。
そんな葵咲の顔を見た銀時は、安堵したように笑みを零す。
銀時「相変わらず暇そうだなァ。具合はどうだ?」
葵咲「大分良くなったよ。それに、毎日銀ちゃんや真選組の皆がお見舞いに来てくれるし。」
退屈はしていない。むしろ毎日途切れない来客に休む暇もないといったところだ。
だが、葵咲に疲れた様子はなく、むしろそんな毎日を楽しんでいる様子だった。銀時は更に安心したようにフッと笑う。
そして、病室のドアの方をくいっと親指で指差しながら言った。
銀時「今日はスペシャルゲストも呼んどいたぜ。」
葵咲「スペシャルゲスト?」
スペシャルゲストとは誰だろうか。葵咲の事を知っている面々は、この五日間で見舞いに訪れていた。
葵咲はスペシャルゲストの正体が分からずにきょとんとした顔をしていると、病室の入口でスタンバッていた“スペシャルゲスト”が、大きな声を上げた。