第2章 個人情報を守れれるのは己のみ。
土方は桂の後を追うか迷ったが、思い直し、先程抱えた疑問を葵咲に問いかけることにした。
土方「…何でさっき俺を庇った?」
その問いかけに、きょとんとした表情で、また、当然の如くといった様子で葵咲は何の躊躇いもなく返答した。
葵咲「え?だって今日一日は貴方の護り屋ですから。」
この返答もまた、土方の予想していなかったものだが、聞いた後で「この女らしい」そう思ってしまえる程、この日一日で土方と葵咲との距離は縮まっていた。
土方「今日のところは勘弁してやる。昨夜の件も奴に利用されたってことにしといてやる。だが…これからは客を選べ。」
その発言には、もしかしたら土方の願望も含まれていたのかもしれない。この女、市村葵咲と対峙したくはない、と。
葵咲「でもお金が…。」
土方「・・・・・。」
葵咲のその台詞には返答する気にならず、踵を返してその場を立ち去ろうとした。そんな土方を葵咲は呼び止めた。
葵咲「土方さん、待って!」
土方は振り返らずにその場を後にしようとした。
葵咲「危ない!!そこにカマキリが!!」
土方「もういい!!うるせェェェェェ!!」
格好良い別れは叶わず、結局その日の護衛は夕方屯所に帰るまで続き、休日が潰れてしまった土方だった。