第20章 下心は知らないうちに懐に忍び込む。
だが、次に葵咲から出てきた言葉は、お礼の言葉ではなかった。
葵咲「私が見てたの、これじゃない。」
土方「えっ!?」
驚いた土方は思わず葵咲の方へと向き直った。どうやら葵咲の見ていたアクセサリーは、土方の購入したブレスレットではなかったらしい。
格好よくきめたつもりが、まるで格好付かずだった。だが、自分が見ていた物を気にしてくれていたという土方の心遣いを嬉しく思った葵咲は、ブレスレットを見つめながら、優しい笑みを零した。
葵咲「でも…嬉しい。私が見てたモノより、ずっと良い…。」
そして葵咲はブレスレットをすぐに腕につけ、土方に笑顔を向けた。
葵咲「ありがとう。大切にするね。」
土方はそれ以上は何も言わず、照れたように頬を掻いて、前を歩く五人の後を追うように歩き出した。そしてそのすぐ後ろを葵咲も歩き出したのだった。
銀時の忘れていたモノ、それは長谷川から任されていた屋台である。その頃の屋台はと言うと、店番をする者が誰もいない状態な為、訪れた客も早々に別の屋台へと足を向けるのだった。
「ねぇ、このお好み焼き屋さん、何?誰もいないんだけど。」
「別のお店行こ~。」
一方そんな事になっているとは露程も知らない長谷川は、マヨネーズを調達する為、作る為に必要な卵を入手する為に、鶏小屋の中で鶏と闘っていた。
長谷川「待っていろみんな、今すぐにいく!!」
長谷川が戻ってくる頃には、お好み焼きの調理どころか、縁日自体が終わってしまっているということは、言うまでもない。