第115章 スタンドの第六感は当たる。
一方その頃、葵咲達より十分程先に出発した松本達。二人は肝試しそっちのけで立ち止まって話し込んでいた。その雰囲気は、ただ事ではないといった様子。穏やかな井戸端会議ではない。
ヅラ子は頬に一筋の汗を垂らし、松本へと言葉を返す。
ヅラ子「それは本当か!?松本殿!」
詰め寄るヅラ子に、松本は至って真剣な表情で静かに頷く。
松本「ええ。あの特徴的な着物…“あの男”で間違いなかったと思います。」
ヅラ子「・・・・・。」
松本からの返答にヅラ子は顎に手を当てて考え込むように俯く。唸るヅラ子に、松本は意見を求めた。
松本「…どう、思います?」
問い掛けられて顔を上げるヅラ子。ヅラ子は松本へと視線を移してそれに答える。
ヅラ子「どう思うも何も、奴の目的は“ソレ”以外ないだろう。」
松本「です、よね…。」
松本もヅラ子の回答に肯定的な様子。考え込みながら俯く二人は眉根を寄せる。二人の間に沈黙が降りた。
そして少しの時間が経ち、ヅラ子が頭を振って再び前を見据える。
ヅラ子「こちらでも調べてみるとしよう。」
松本「お願いします。情報は銀時さん経由か、直接松本クリニックに。ああ、病院に訪れる際はその格好が良いかと。」
ヅラ子「?」
松本はヅラ子の風貌を指差す。いつもの桂小太郎の恰好では何かマズイのか。松本クリニックについて知らないヅラ子は、彼の診療所が女性専門の医院なのかと考える。だが松本はそんなヅラ子の思考をよそに、その理由について述べた。
松本「医院には真選組隊士が時折出入りしています。それに私は今や“真選組の専属医”。もし攘夷志士、桂小太郎を見掛けたなら通報の義務がありますので。」
ヅラ子「!」
松本の言葉に目を見開くヅラ子。ヅラ子が目を瞬かせていると、松本はフッと笑みを零して言葉を続ける。
松本「葵咲さんのご友人、“ヅラ子さん”は知りませんけどね。」
ヅラ子「フッ。肝に銘じておくとしよう。」
松本の気遣いに痛み入る。ヅラ子もまた、笑みを零しながら目を瞑って頷いた。