第108章 心霊スポットには身代わり人形が必須。
午前中の診察を終えて机に向かう松本は、何やら浮かない顔を浮かべている。松本は唸りながら手を組み、考え込んでいた。
松本「・・・・・。」
コンコン。
診察室のドアをノックする音が響く。松本が小さく返事をすると、看護師が顔を覗かせた。
「先生、お客様です。」
午前の診察は終了した。その頃合いを見計らっての来訪か。松本が入口に目を向けていると、看護師と入れ替わりに葵咲と土方が部屋に入って来た。
松本「…!葵咲さんに土方さん…。」
葵咲「?どうかされました?」
少し驚いた様子の松本。いや、ビクついた様子の、といった方が良いだろうか。いつもと違う反応に、葵咲と土方は怪訝な顔を浮かべる。だが松本は慌てて首を横に振った。
松本「あ、いえ…。」
土方・葵咲「?」
松本の様子に気になるものがあった。その事を尋ねようか迷う葵咲だったが、それよりも先に松本が話を逸らすように話題を振る。
松本「どうされたんですか?二人で来院されるなんて珍しい。」
そのように話を振られては、先程の松本の様子について尋ねづらい。仮にここで尋ねたところで松本の性格上、はぐらかされるだろう。葵咲は質問を諦め、気を取り直して満面の笑みを松本へと向けた。
葵咲「短英さんは、旅行に行くなら何処が良いですか?」
土方「いや、ぶっ飛びすぎだろ。」
何の前置きもなく投げられる質問に、土方は思わずツッコむ。松本も片眉を上げ、怪訝な顔を浮かべながら葵咲の方を見やった。
松本「なんです?唐突に。」