第107章 自分の為に頭を下げてくれる人には心惹かれるものがある。
室内に少しの沈黙が降りるが、すぐに将軍が口を開いた。
茂々「…だが・・・・慰安旅行(先程)の件、考えてはくれまいか?」
葵咲・土方「!」
茂々「前に連れて行ってもらったスノーボード、あれはあれで楽しめたのだが…違った物足りなさを感じていた。」
そよ「兄上様…。」
前に行ったスノーボードとは。銀魂本編、コミック第40巻344訓~の話である。松平にお忍びスノボ旅行を頼み、真選組総出で警護に当たったアレである。途中遭難しかけて山小屋に籠ったアレである。
あの時のスノボは完全警備体制で、滑る時さえ命綱。将軍の身を案じる真選組としては当然とも言えるのだが、将軍本人は違った物足りなさを感じていたらしい。
一般市民と同じ目線で、同じ立場で旅行を楽しみたい。それが将軍の願いだった。その想いがあるからこそ、今回のイベント企画依頼をしたとも言える。
しかも敢行するはずだったイベントは中止。旅行への想いが益々募ってしまったというわけだ。
そんな想いを胸に、将軍は温かみのある表情で葵咲と土方を見据える。
茂々「日夜民を護ってくれているそなたらと、腹を割って色々話をしてみたい。皆と無礼講で接する機会が欲しい。」
葵咲「上様…。」
将軍の言葉に、葵咲の胸はきゅっと締め付けられるような感覚になる。そんな葵咲には気付いていないのか、土方は眉根を寄せて首を横に振るう。
土方「上様、それは流石に受け入れられない相談です。」
茂々「…そうだな。すまない、困らせてしまった。」
将軍本人もダメ元で言ってみた、という具合だったのだろう。将軍はそれ以上無理強いする事はせず、フッと笑みを漏らして目を瞑った。
そんな将軍の少し寂しそうな表情を見て、葵咲は決意に満ちた表情を浮かべる。そして小さく頷き、右手を胸に当てて将軍へと真剣な眼差しを向けた。