第104章 第百四訓 「真剣勝負にドーピングは邪道。」
土方の部屋に入り、土方は胡坐をかいて座る。その向かいに葵咲は正座し、小さくなりながら俯いた。
土方「・・・・・。」
葵咲「・・・・あの…。今回は…その・・・・。」
桂と行動を共にしていた事を咎められるに違いない。下手をすれば切腹を言い渡されるかも。そんな覚悟の元、葵咲はおずおずと言葉を押し出す。そんな葵咲を見ながら土方は大声で怒鳴りつけた。
土方「お前何考えてんだ!!」
葵咲「ご、ごめんなさ…」
突然怒鳴られ、ビクリと背筋を震わせる葵咲。
切腹の覚悟を決めよう、そう思った葵咲は、きゅっと目を瞑る。
だが、次に土方の口から出て来た言葉は…。
土方「男二人と泊りがけで出掛ける事の意味分かってんのか!?」
葵咲「・・・・へ?」
思っていた言葉と違う。想定外のその言葉に、葵咲は思わず顔を上げて目をぱちぱちさせた。そんな唖然とする葵咲には気付いていないのか、土方は深く目を瞑り、怒りの表情のまま続ける。
土方「言いくるめられて襲われでもしたら…。」
葵咲「ちょ、土方さん!」
土方「あ?」
ここで思わず土方の言葉を遮る葵咲。話の論点がズレている気がする。確かに土方の言うように、幼馴染とは言え、葵咲(年頃の娘)が男二人と旅行というのは、言われてみれば自粛した方が良い行為だろう。
だが今それが一番の問題なのか?真選組隊士として、攘夷志士と行動を共にした事が問題なのではないか?そう思った葵咲はそれをそのまま口にする。
葵咲「あの、桂(攘夷志士)と…一緒だった事、じゃなくて?」
土方「え?」
どうやら無自覚無意識だったらしい。葵咲からの指摘に、土方は顔を真っ赤にして咥えていた煙草を口からポロリと落とした。
土方「・・・・っ!」
葵咲「…え…っ!?」
二人は顔を真っ赤にしてその場で固まった。
そんな二人を近藤は覗き見ていた。先程の土方の態度から葵咲の事が心配だったのだ。だが想定外の展開に近藤もまた、頬を赤らめドキドキしながら見守っていた…。
(近藤:・・・・っ!)
- 次回予告 -
無事に工場や薬の調査を終えて萩から戻った山崎と松本。
調査で分かった鐡の目的は恐ろしいもので…?
玲央と紗羅を連れ帰った鐡の紅蓮と瑠香。
母船へと帰った彼らもまた動き出す??