第102章 天才の頭のネジが外れればサイコパス。
- 葵咲サイド -
工場地下の一室へと葵咲が連れて来られて約一時間が経過。葵咲はゆっくりと目を覚ました。
葵咲「ん…っ。」
緒方「やぁ、気が付いたかい?」
目を覚ましたとはいえ、薬をかがされた影響で意識はまだ朦朧としている。葵咲が目を開くと、視線の先にボンヤリと足を組んで椅子に腰掛けている緒方が見えた。緒方の姿を捕らえて、ようやく頭が冴えて来た。自分が何らかの薬をかがされて緒方に眠らされた事を思い出す。
葵咲は慌てて起き上がろうとするも、上手く起き上がれない。よく見ると腕は手前で手首をリボンのような紐でキツく縛られていた。そして左足には足枷が付けられており、ベッドの脚と繋がれている。簡単には抜け出せそうにない。
様子を見るという選択肢を取らざるを得なくなった。葵咲はゴクリと唾を飲み、緒方の方を睨む。
葵咲「ここは?」
緒方「工場の地下、僕の実験室だよ。」
葵咲「信女さんは!?彼女をどうしたの!?」
自分の事よりも、信女の安否が気になった。自分が倒れた事で、異形種達を信女一人で相手取らなければならない状況になってしまったのだ。しかも異形種達には手が出せない事に加え、鐡の少女もいた。無事であるのか、それが何よりも気掛かりだった。
だがそんな葵咲の心配など興味がない様子の緒方は小首を傾げる。
緒方「信女?あぁ、先程一緒にいた女性かな?彼女の相手は紗羅君と僕の部下達にお願いしたから分からないなぁ。」
葵咲「貴方…っ!!」
ギリリと歯噛みする葵咲。葵咲は更にキツイ眼差しでキッと緒方を睨むが、緒方はものともしていない様子。微笑を浮かべながら、緒方は椅子から立ち上がって葵咲の傍へと歩み寄る。