第14章 【縁下兄妹、東京へ行く】後編
言っていると木兎がままコ、と疑問形で言う。
「あかーしが言ってたままコってこいつ。」
「そうです。」
「ちょお赤葦さんっ、何バラしてはるんですかっ。」
「寧ろ君の事だから自らバラすと思ってたんだけど。さっきの自己紹介ちょっと足りてなかったよな。」
「なあっ、何でお前ままコなんだっ。」
「ふぎゃあっ。」
「こら木兎っ、アンタはまたっ。」
「だって何であかーしがままコって呼んでんのかわかんねーもんっ。」
「子供。」
騒ぎを聞きつけた鷲尾が呟くが勿論木兎はお構いなしである。そして縁下美沙はとうとう最大限開き直った。
「いや特にどうっちゅう、もといどうって事ないんですけど。」
「ままコさん、喋りにくいならもう関西弁でいいから。」
赤葦に後押しされてしかもいつの間にやら音駒、梟谷共に他の連中も美沙に注目している。烏野勢は義兄の力が慌てている所を木下と成田が懸命になだめていた。
「ホンマどうっちゅうことないです、」
注目度合いが予想以上だったことにほんの少し驚きながらも美沙は言った。
「私その辺におるごくただの動画投稿者でハンドルネームがままコってだけです。」
どうっちゅうことはあった。音駒、梟谷の多くはマジかっと驚く。特に木兎の反応が激しい。
「マジでえっ。」
木兎はまるで頭にバレーボールがぶつかったのかと思うくらい衝撃を受けた顔をした。
「スッゲーお前動画やってんのっ。」
「ええまぁ。」
「ってか動画投稿者ってただもんなのか。」
尾長がよくある素朴なご質問をぶつけるが相手は義兄にすら半分ボケと言われる縁下美沙だ。
「だって再生数三桁あったらマシな方のド底辺やし今日日スマホやタブレットでちゃちゃっと撮影も加工もアップも出来るし。」
当然こういう返答になった。尾長はどうしたらいいんですかという目を赤葦に向けて赤葦はこういう子だから気にしないでとこっそり呟く始末である。