第13章 【縁下兄妹、東京へ行く】中編
勿論これには動揺する縁下美沙ではない。ああそれねとあっさり答えた。
「私生まれた時には既に両親がいなくて関西出身のばあちゃんに育てられた結果関西弁になりまして、そのばあちゃんも高校上がってしばらくしてから亡くなりまして親戚は誰も面倒見れない状態でさて生きていけるかしらと思ってたら母のお友達だった縁下さんちに引き取られて学校も名前も変わりました、今ここ。」
一瞬梟谷の面々は―木兎ですら―沈黙した。美沙が何も考えずに生い立ちを語ると大抵はこうなる。
「何かその、マジ悪かった。」
木葉が呟く。
「すっげぇ人生だなぁ。」
小見がふええといった調子で言う。
「漫画かドラマみてぇ。」
猿杙は笑っているのかそうじゃないのか判別しづらい顔、
「そんな重い事情よくさらっと語れるな。」
尾長は感心しており、鷲尾はこそっと目元をぬぐっている。
「よく言われますけど」
美沙は首を傾げる。
「誰も悪い事してないし、縁下さんちには望んで引き取られたので。」
「よく出来た子だわ。」
「いい子いい子ー。」
雀田が呟き、白福に至ってはいきなり美沙を抱き寄せてきた。
「ふぎゃあああっ。」
たまりかねた美沙は叫ぶが
「ふぎゃあだって、可愛いー。」
白福はおまけで勝手に頭を撫で撫でし始める。
「雪絵、何やってんの。」
「だっていい子じゃん可愛いよこの子ー。」
「それやっちゃん担当。」
「ええっ。」
「んーでも貴方も何か可愛いー。大変だったんだねーお姉さんが慰めてあげるー。」
「ふぎゃあ。」
美沙は恥ずかしくなって顔が上げられない。
「で、」
美沙が白福にぬいぐるみみたいな扱いを受けて困惑している中雀田が後ろを振り返る。
「そこのアンタは何やってんのよ。」
そこのアンタである木兎は目元を鷲尾以上にゴシゴシやっていた。