第13章 【縁下兄妹、東京へ行く】中編
とか何とか言っている間に時間は高速で流れた。気づけば烏野一行は東京に近づいている。
「美沙ーっ。」
通路の向かいで日向が声を上げる。
「起きろ起きろーっ。」
「日向声おっきいよぉ。」
谷地がオロオロする中美沙はふぎゃと間抜けな声を上げて何とか起き出した。
「そろそろなん。」
谷地が頷くと美沙は片手の甲で目をこする。なかなか目が開いてくれない。
「な、な、美沙、タワーとか見れっかな。てか美沙は見たことある。」
美沙が起きたと見るや日向はお構いなしでまくし立てるが美沙の目がまだとろんとしている事には気づいていない模様だ。
「タワーて」
美沙は疑問形で呟いた。
「ポートタワー。」
何でやねん。
「それもっと南だから。」
即刻月島が突っ込む。
「かんっぜんに寝ぼけてるよね、てかアンタあっちの出身じゃないでしょ。」
「美沙さんらしいって事かな。」
「山口感心するトコじゃない。」
「おい何の話だ。」
「王様はもっと地理を何とかしてくれない。」
「ああっ。」
危うく月島と影山で一悶着起きそうになったが幸い日向が縁下さーんと美沙の義兄に声をかけた為勢いが削がれてすぐに落ち着いた。
「ポートタワーってなんですかっ。」
「何でそんな話になったんだっ。」
いきなり振られた力は一瞬驚くがすぐ気がつく。
「美沙、また何かネタを投下したな。」
大分目覚めてきた美沙はさあ、と視線を逸らすという技に出る。
「ごまかそうとしてるぞ。」
呟く木下に力はいいよ別にと答える。
「父さん達に相談してそのうち南の方にも連れて行こうかな。」
駅が近づいていた。
一方である。
「烏野は駅についたとよ。澤村から連絡がきた。」
梟谷学園高校のとある一室、黒尾がスマホを見つめながら呟く。
「予定通りですね。縁下君には申し訳ないけどままコさんがどうなるやら楽しみといった所かな。」
静かに言う赤葦に木兎が食いついた。